5月26日(日)

何故人は旅に向かうか?という問を考えているとNHKアーカイブスで佐々木昭一朗作の「川の流れはバイオリンの音」が始まり、観賞。観賞と変換しようとしたら、間章と出て来た事にビックリ。私は死ぬがバイオリンは決して死なない。あるバイオリン職人が劇中に発した言葉だが、この言葉がどうしても私の心を掴んで離さない。ロンバルディア地方の川のほとりに生きる、こうした人々との出会い、そして別れ──。川に導かれ、音に包まれるA子の旅の物語を描いた作品だ。
特に何らかの行動、発言がドラマを生む訳ではなくて、劇中で発生する。歌やバイオリン、ピアノの音、そして街の音、それらが優しく、そして唐突にドラマを掴みとっている。前回の四季ユートピアノが過去の体験を通して物語が進んで行ったのに対して、こちらはそれがない。ドキュメンタリーのようでありながら、綿密なドラマ性も感じさせる。しかしそれは目が感じた事ではなくって、様々な音楽が鳴っている事に対して全開になった耳が誘って行ったのかもしれない。日本では響く事のない音の響きを感じる事ができた。いや映像があるからヨーロッパの音の響きを感じる事が出来たのか?音は完璧に現地録音なのだろうか?最後は技術的な事を書いてしまったが、そんな事ではこの作品を語る事が出来ないのでまた今度